密室・殺人

9/20 - 9/21 ★★★★☆

「密室殺人」ではなくて「密室・殺人」。この「・」が重要なんです。
ホラー/SF短編の名手、小林泰三の本格長編ミステリー。
うぁ〜〜〜やられた!という感じ。
確かに密室だし、殺人だか事故だか自殺だかわからない死体もあります。
頭の切れる探偵も登場して、最後には「密室・殺人」の謎も解決します。


だけどそれで終わらないのがやすみんのすごいところ。
終盤にいくにしたがって、事件とは別の「?」がだんだん「???」になって・・・
最終的にそっちの謎は・・・うぁ〜〜気になる気になる!

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密室・殺人 (角川ホラー文庫)

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以下ネタバレ

冒頭の『鏡の国のアリス』からの引用がヒントらしいので・・・

"I see nobody on the road," said Alice.
"I only wish I had such eyes," the King remarked in a fretful tone.
"To be able to see Nobody!"

これは日本語には訳せないですね(^-^;
アリスは否定形の意味でnobodyを使って「道で誰にも会わなかった」と言っているのに、王様はそれを文字通り"nobodyを見た"と受け取って、「Nobodyが見える目が欲しい!」と答えています。
王様の言うNobodyは、星新一風に言うと「エヌ氏」、つまりどこの誰でもない人を表しています。
これが四里川探偵の正体なのでしょう。


ラストシーンで、四ッ谷助手が「昔、何か嫌なことがあった時にも先生は助けてくれた」と言っています。
四ッ谷助手のトラウマとなっている事件で、精神崩壊を防ぐ為に誕生した人格が先生なのではないでしょうか。
私はこの「密室・殺人」事件ごと、四ッ谷助手が名簿を打ち込んでいる間に見た白昼夢なのでは?と思っています。